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暖冷房設備計画

目次

目的とポイント

現在の住宅では、断熱外皮や日射遮蔽の対策のみでは室内環境を快適に保つことが困難である場合が多いため、暖冷房設備が必要となります。
暖冷房設備、とくに暖房設備によるエネルギー消費は大きく、省エネルギー設計の重要性は高いといえます。
戸建て住宅に採用される暖冷房設備には多くのシステムがあり、運転方式で分類すると、個別方式とセントラル方式に分けられます。
暖冷房設備の省エネルギー設計手法を系統的に整理することは容易ではありませんが、コストや設備の特徴を考慮して適性な方式を選択し、それぞれの方式において省エネルギー設計を行うことが大切です。

 

暖冷房設備計画の検討ステップ

ステップ1 暖冷房設備方式の検討
建物外皮の断熱性能
世帯構成・在宅時間の検討
換気設備方式など
その他の選択要件

ステップ2 暖冷房設備計画の省エネルギー手法の検討
(1)適切な高効率機器の選択
(2)省エネルギー計画・設計上の配慮
(3)運転方式の配慮
  方式1 エアコン暖冷房による個別方式
  方式2 温水式床暖房+エアコン暖冷房による個別方式
  方式3 セントラル暖冷房方式

ステップ3 補助的暖冷房器具の活用検討
(1)室用途に適した区具の選定手法
(2)運転方式の配慮

 

暖冷房設備方式の種類

方式 対象室 運転時間
個別方式 エアコン暖冷房 居室 間欠
温水式床暖房+エアコン暖冷房 居室 間欠
セントラル方式 セントラル暖冷房 住戸全体 連続

(1)エアコン暖冷房

居間や食事室、個室などの各室にルームエアコンを設置して個別に暖冷房を行う部分間欠暖冷房方式です。
必要に応じて設置し運転できるという長所がありますが、非暖冷房空間となる廊下、階段、洗面所などと室温の差が大きくならないような配慮が必要となります。

(2)温水式床暖房+エアコン暖冷房

ルームエアコンに加えて、温水を循環させる床暖房を組み込むもので、比較的運転時間の長い居間や食事室を中心に採用されます。
室内の温熱環境は一様になり高い快適性が得られますが、イニシャルコスト・ランニングコストともに大きくなる傾向があります。
また、(1)と同様、非暖冷房空間との室温の差が大きくならないような配慮が必要となります。

(3)セントラル暖冷房

住宅全体で1台もしくは各階に1台のヒートポンプ熱源を用い、冷温風をダクトで各居室に運び、換気システムと組み合わせて住宅全体の暖冷房・換気を行う全館連続暖冷房方式です。
住宅内の温熱環境をほぼ均一に保つことができるので、高い快適性が得られますが、エネルギー消費量は大きくなります。

 

暖冷房設備方式の選択要件

(1)建物外皮の断熱性能との関係について

住宅の断熱仕様は、暖冷房設備計画の基本となります。
気象条件にふさわしい仕様を選択し、断熱水準と暖冷房設備の関係を考慮して暖冷房設備方式を検討することが必要になります。

(2)世帯構成・在宅時間との関係について

単身世帯のように在宅時間が短い場合であれば、間欠運転の部分暖冷房で十分といえます。
セントラル方式を採用すると、不在時に無駄になるエネルギー消費や立ち上がり時の空調負荷が生じます。
在宅勤務や高齢者を含む世帯のように比較的在宅時間の長い世帯では、住宅全体の温度差が少ない温熱環境のバリアフリー化を目指し、セントラル方式の採用を検討するのもよいでしょう。

(3)換気計画との関係について

通常の換気計画では、従来の開放燃焼型のストーブによる汚染物質に対応することができないため、その種の暖房器具を用いる場合、住まい手の健康への影響や結露の問題が生じる可能性があることを、最初に留意すべきです。
エアコン等で大きな気流が生じていると、それが換気の機能を兼ねたものであると誤解されることがありますが、暖冷房設備を運転させ、窓を閉めている時間帯こそ、機械換気等が必要になるときです。

(4)快適性とコストのバランスについて

経済性だけを考えれば、通常のルームエアコンによる個別方式がもっとも低廉といえます。
個別方式とセントラル方式とでは、セントラル方式の方が快適性が高く、個別方式の方が省エネルギー性が高いといえます。
温水式床暖房やセントラル暖冷房方式を採用すると、イニシャルコスト・ランニングコストともに大きくなる傾向がありますので、利便性や快適性は大きく向上しますが、それに伴うコストの増加を考慮する必要があります。
住宅全体に高い快適性を求める場合にはセントラル暖冷房方式の採用が考えられますが、その場合には断熱性能や日射遮蔽性能等の工夫によって、暖冷房負荷の低減をはかる必要があります。
省エネルギー性の高い暖冷房設備に対しては、補助金制度などを活用できる場合があります。

(5)空間の特徴に適した方式の採用

天井高が高い場合や吹き抜けがある場合には、室内の上下で温度差が大きくなる傾向がありますので、足元を暖める床暖房が適しています。
また、天井扇等のサーキュレーター(空気撹拌機器)を用いて室内の上下温度差を解消させるのも、よう方法です。
間仕切りの少ない大空間(オープンプラン)で構成される住宅では、セントラル方式を採用することが適しているといえます。
ルームエアコンの室内機では壁掛型の他、天井・壁埋込型など、機器が露出しない機種もあります。
セントラル方式では、室内に吹出しユニットのみが現れます。
これらのインテリア性の高い機器の採用も検討に値します。

 

方式1 エアコン暖冷房による個別方式

1.適切な暖冷房能力を持つ高効率機器の選択

ここで大切なのは、「部屋の負荷に適した出力を持つ機器」を選定することで、「部屋の負荷を超える出力を持つ機器」ではありません。
暖冷房機器に限らず、必要以上の出力を有する機器の使用は、エネルギー消費の効率を落とす結果になります。

2.省エネルギー計画・設計上の配慮

非暖冷房空間の温熱環境が居室内と大きく異ならないように、住宅全体の断熱性能を高めることが必要です。
とくに、浴室や洗面所、脱衣室のまわりの断熱はおろそかになる可能性が高いので、注意する必要があります。
また、浴槽の断熱を行うと、浴槽内の熱が外に逃げず浴室内に留まり、室温の低下を抑えます。

3.運転方式の配慮

エアコン(ヒートポンプ)は熱をつくる効率がよく、電気カーペットやコタツに比べると、発熱効率が数倍にもなります。
そのため、タイマーを用いて在室予定の1〜2時間前から作動させ室内を暖めても、エネルギー消費はさほど大きくなりません。
エアコンの消費電力は、暖房開始時に最も大きく、その後徐々に低下し、低出力運転になります。
さらに室内が十分に暖まり、外気温度の上昇や日射の影響で暖房を必要としなくなると、エアコンの消費電力は非常に少なくなりますが、最低でも30W程度の消費が継続されるため、屋外の気候を考慮して電源を切ることが望まれます。
ただし、エアコンは停止から再運転にかけては暖冷房とは異なることにエネルギーが使われるため、15分程度の使用停止であれば、継続して運転した方がかえって省エネになります。

 

方式2 温水式床暖房+エアコン暖冷房による個別方式

温水式床暖房はコストが大きくなる傾向にありますが、窓ガラス面のコールド・ドラフトによる不快感を緩和するのに効果があり、また、室内の温熱環境を均一に保つことが容易になるなど、室内の快適性を高く維持できます。
通常の室では在室者は床や椅子に座るため、空気を送風する暖房では足元を冷やす、人のいない上方の空気ばかりを暖める、埃が舞うなど不利な点も少なくありません。

1.省エネルギー計画・設計上の配慮

熱源と床パネルとの循環配管には、かなりの損失熱が想定されるため、十分な保温と配管長の最短化が必要です。
床温水パネルと床構造材間にも、十分な断熱が必要です。
給湯システムと熱源を共用する場合、暖房と給湯を1台の熱源で行うため、配管計画にも留意する必要があります。

2.運転方式の配慮

床暖房は、長時間安定した温熱環境を維持するのに適しており、逆に短時間で室内を暖めることには不向きな暖房設備です。
したがって、在室時間の長い居室に採用すべきです。
また、室内をより早く暖めるためには、運転直後は70℃を超える高温の温水を循環させて加熱し、設定室温に至った後は60℃程度の温水に切り替える方式が有効です。

 

方式3 セントラル暖冷房方式

住戸内の温熱環境の均一化がはかられ、温熱環境上のバリアフリーとなり、快適性は格段に向上しますが、エネルギー消費量は増加する傾向があります。

1.省エネルギー計画・設計上の配慮

ダクト(とくに小屋裏部分に置かれるダクト)の断熱が必要となります。
可能な限りエネルギー消費量を抑制するため、躯体の高断熱化と漏気量の低減が必要です。
冷房負荷を抑制するためには、ガラス窓の配置・大きさなどを配慮したり、日射遮蔽部材の措置を施すことが大切です。

2.運転方式の配慮

不在室については、設定室温を低めにしたり送風量を絞るなどして、空調負荷を減らすことが大切です。
空調機または熱交換器のフィルターの清掃や交換を励行することが、エネルギー消費量の削減につながります。
冬期に温度を上げすぎると、エネルギー消費が増加するだけでなく過乾燥となりやすいので、室温の上げすぎには注意が必要です。

 

補助的暖冷房器具の活用

補助的な暖房器具には、コタツ、電気ストーブ、ハロゲンヒーターなど、冷房器具には扇風機などがあります。
便所、洗面所、脱衣室などの使用時間が短い付室では、補助的な暖冷房器具の使用が有効と考えられます。

1.室用途に適した器具の選定手法

居室では、電気パネルヒーター、開放型暖房機器、ハロゲンヒーター、電気ストーブ、電気カーペットなどが対象となります。
ただし、これらの器具の長時間の使用は、省エネルギーの観点からは推奨されません。
居室で補助的な器具を使用するのは、起床直後や帰宅直後などすぐに暖まりたい場合の短時間の使用に限ると考えるべきです。
付室では、便所の暖房便座や洗面所・脱衣室の浴室乾燥システムを利用しての暖房、その他小型の電気ストーブ、セラミックヒーター、ハロゲンヒーターなどが対象となります。
エネルギーの利用効率をよく調べて選定するように心がけることが重要です。

2.運転方式の配慮

(1)暖房便座

たいへんエネルギー消費量が大きいので、機種の選定や使用方法に注意が必要です。
人感センサーにより、蓋の開閉や便座面の昇温を行うタイプなど、省エネルギーに配慮した機種を選定する必要があります。
また、夜間に在室者がいない階の暖房便座のスイッチを切るなどの対策も検討に値します。
その他にも省エネルギー機能をよく理解して使うことが大切です。

(2)浴室乾燥システム

洗面所・脱衣室の快適性・安全性を考慮して、浴室乾燥システムを暖房に用いることもできます。
この場合、洗面所・脱衣室についても居室と同程度の断熱仕様が望まれます。
熱源としては、電気ヒーターや給湯熱源による温水が用いられますが、温水の場合は配管計画に留意することが必要です。

(3)扇風機

冷房時に扇風機を活用するとエアコンの設定温度を低く抑えることができます。
外出から帰宅した場合や入浴後などに活用すると、むやみに室温の設定を下げずに済む場合があります。

(4)ホットカーペット

主に足元の冷えの解消や、室全体を暖めるほどではない場合の補助的な暖房として使用されます。
しかし、最近の高効率なエアコンを用いれば、ホットカーペットと同程度の電力消費量で室全体を暖めることができる場合もあります。

 
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